1995年4月、英国国協会のリヴァプール主教が英国政府に対し、宝くじを見直すように求めました。特に、賞金をもっと少額にするよう示唆したといいます。これは、ある男性が約15億円の賞金を取り損ねたと思って自殺した、という事件に対する主教の反応です。この男は、リヴァプールに住んでいた55歳のティモシー・オブライエン。
宝くじを賭けそこなったあとに、銃で自殺しました。彼は同じナンバーを一年間、毎週賭け続けていましたが、ある週だけ賭けるのを忘れてしまいました。ところがその週に、彼が賭けていたナンバーが当たり、巨額の賞金を取りそこなったのです。
ティモシー・オブライエンは、賞金を得ても人生が良いほうに変わったかどうかはわからない、ということには気づいていませんでした。宝くじを当てた人の多くが、その後不幸な人生を送っています。
巨額のお金をめぐって、思ってもみなかった問題が出てくるからです。手に入れてもいないお金が原因で自殺するようなタイプであったことを考えると、巨額の賞金がかれに幸福をもたらすことはまずなかったでしょう。
ついでながら、オブライエンの検視結果が発表された場で、彼がいつものナンバーを賭けていたとしても実際には約1万2千円しか得られなかったことが明らかにされました。
リッチになればいろんなことができる。そんな誤った期待を持っている私たちは、大金を得ると、オブライエンのように分別を失ってしまいます。
●お金がたっぷりあれば、幸福になれるのに。
●お金がたっぷりあれば、余暇活動を楽しめるのに。
●お金がたっぷりあれば、もっと自信が持てるのに。
●お金がたっぷりあれば、もっと人から好かれ、結婚相手も見つかるのに。
もし、こんな考えを持っているなら、お金と恐れに支配されています。お金さえ持っていれば安心だと思っていたら、これは真実ではありません。お金イコール安心なら、ほどほどのお金では幸福にはなれません。
たくさんのお金を得ると、それを失うのではないかと心配で、やはり幸福になれません。お金が増えれば増えるほど、失うのではないかという心配も大きくなります。ところが、安心をお金に求めない人々の多くは、ほどほどのお金で幸福になっています。
貧しくても満ち足りていれば豊かです。十分に豊かなのです。