2019年12月22日日曜日

安定した職場

 安定した職場など幻影にすぎません。



 1961年のミュージカル「努力しないで出世する方法」はアメリカの企業社会を皮肉った舞台ですが、1995年にブロードウェーでリバイバルされました。このミュージカルによれば、出世を目指す人は上司の機嫌を取り、前途のあるチームに入り、前途のない人を裏切らなければなりません。成功するためには、出世街道を万進している人に対してイエスマンまたはイエスウーマンになります。さらに重要なことは、他の人が何をしているかよくわからないほど大規模な会社を選ぶことです。大規模な官庁もいいでしょう。社内メモは実際には役立ちませんが、出世するためにはそれをよく読み、たくさんのメモを書いて、自分の名前ができるだけ人の目につくようにします。成功できるか否かは、知性や実際の業績よりも、いかにリスクを避けられるかで決まります。

 これは今日の自分の姿ではないでしょうか?自分は大規模や官庁は安定していると思っていないでしょうか?忠誠心と滅私奉公を引き換えに、退職するまでずっと雇用してくれると期待していないでしょうか?メモを書き、イエスマンを続けていれば、雇用主は自分を貴重な人材だと思って大事にしてくれると考えていないでしょうか?高い給与をくれ、どんどん昇進させてくれると思い込んでいないでしょうか?

 こういうことを期待しているなら、ある経営コンサルタントに言わせれば、自分は愚か者の一人です。驚くほど多くの人びとが、若者も年寄りも、こういう期待を抱いています。フルタイムの仕事は安定しており、出世階段を登るチャンスがあるという期待は、最近まで大半の教育者や両親、社会が抱いていました。でも、今もこの期待を持っているなら、自分は現実を見ないで、ファンタジーを追い求めています。

 今日、安定した職場など幻影にすぎません。ここ数年で、従来のような職場は減り続けています。安定した職場は、恐竜と同様、絶滅の道をたどっています。間違った期待を抱いていることを他の人びとのせいにしてはいけません。それは、自分自身の責任です。「揺りかごから墓場まで」の終身雇用は数年前からファンタジーになっており、自分が生きている間に再び現実になることはないでしょう。

 いまだに企業を安全な場所と考え、しがみついている人びとの仲間入りをしてはいけません。たとえ雇用が保証されなくても、この世が終わるわけでも陰鬱きわまる世界になるわけでもありません。結局、雇用が保証されない世界をなんとか生き抜いていくのは自分自身です。かつてそうだったように、雇用主が仕事を保証してくれる時代は終わったのです。

 自分が忠誠を誓う相手は自分自身でなくてはなりません。それではあまりに利己的だと思うかもしれませんが、会社に忠誠を誓わせようとする雇用主ほどではありません。成功したいと望むなら、安定した職場という概念を変えるべきです。安定した職場とは、本当は、どんな状況にも対応できる自分自身なのです。
 
 自分の創造性と創意工夫によって誰でも生き残ることができます。

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